2021年10月15日(金) Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)
Text by YUKO HONMAPhoto by HIROAKI ISHIKAWA, TAKAYUKI OKADA, YUKI KAWAMOTO

「ありがとう、愛知。みんなニコニコしてるから、こっちもニコニコしちゃってね。クールに決められないじゃないか!」
ライヴの大詰め、その言葉どおりに相好を崩しながらイタズラっぽくそう告げたhydeの感謝が、この日の至福と充実を端的に物語っていたのではないだろうか。バンド結成30周年のアニバーサリーとして各公演で様々なドラマを生みだしては順調に歩を進め、いよいよ中盤へと突入した“30th L'Anniversary TOUR”。10月15日、愛知県 Aichi Sky Expo初日もまた刮目の展開を見せてくれた。

今ツアー最大の特色は、昨年の“ARENA TOUR MMXX”を踏襲しつつさらに進化させた円形のセンター ステージと、そこから客席に向かって四方に伸びた花道。メンバーとオーディエンスの物理的距離を縮めてくれるこの演出が、おそらく全会場のなかでも比較的キャパシティが小さく、また、客席が1階席のみというフラットな設えのAichi Sky Expoではいっそう際立ち、最後列からでも過ぎるほどの近さにまず度肝を抜かれる。そうしてライヴハウスをも彷彿させる距離感で次々と浴びせかけられる楽曲たちのなんと殺傷力の高いことか。まだ続くツアーゆえセットリストの詳細を明かすことは避けたいが、むせ返るほど濃厚に立ちこめた色香が次の演奏に移行するや霧散し、一瞬にして会場全体をブライトな清々しさに包みこむその鮮やかなコントラストや、アグレッシヴな疾走感で場内を席巻したかと思えば、たちまちダークかつ幽玄なる世界へと切りかえて違和感なくオーディエンスを陶酔させる剛腕には舌を巻くほかなかった。レーザー光線やLEDを駆使した照明やスモーク、トーチなど楽曲に寄りそってステージを彩る各種演出の見事な連携プレーもしかり。新型コロナウイルス感染症予防対策の一環としてマスク着用のうえ、発声禁止を義務づけられたオーディエンスは、代わりにツアーグッズの「バットマラカスライト」で参加。シャカシャカと音を鳴らし、自身で色を変えられるライトの光でメンバーといっしょになって空間を作りあげていくさまも実に美しい。ハミングできれいなハーモニーを響かせた「MY HEART DRAWS A DREAM」や、「ただでは聴かせられない」と挑発するhydeに応えて見事なウェーブを決めて「FOREVER」の演奏を勝ちとるなど、オーディエンスの存在がその日ならではのライヴを形作るのだとつくづく思う。


特筆すべきは前半戦の終わり間際、「REVELATION」での出来事だろう。アジテーティブなSEが流れるなか、hydeの「カモン!」を合図にステージが回転、その上で縦横無尽にパフォーマンスするメンバーに客席の熱狂は早くも最高潮をマークしたが、なんとtetsuyaがステージから転落するというアクシデントが起こったのだ。暗めの照明だったこともあり、演奏終了後のMCでhydeが「愛知ちゃん元気? ちょっとうちのメンバーに急に元気じゃない人が現れました。すみません、ちょっと休憩させてあげてください」と冗談めかして告げるまで気づかなかった人もいたかもしれない。するとhydeの言葉に続けるようにギターを爪弾き始めるken。すぐさまyukihiroがドラムで追いかけ、hydeも鼻歌を歌いながらメロディを乗せていく。この、誰から言うでもなくスタートしたセッションがそのまま(途中で一度、コード進行を変えながらも)10分近くも続くとは! しかも既存曲ではない、まったくのインプロヴィゼーションだ。なんと貴重で贅沢な時間だろうか。のちにhydeが「公開作曲」と冗談めかしたこのセッション、もしかすると新曲誕生の瞬間に立ちあえてしまったのかもしれない。それにしてもなんという胆力だろう。tetsuyaいわく、「30年やってきて初めてステージから落ちた」というアクシデントにも動じることなく、むしろアクシデントを自分たちの土俵に引きいれて新たな曲のカケラまで生みおとしてしまうなんて。「ちょっと30年前を思いだした」「リハスタ(リハーサル スタジオ)でバーッて鳴らして“こんなんちゃうか?”みたいなね」と無邪気に声を弾ませる彼らに30年選手の矜持を見せつけられた気がする。無事に戻ってきたtetsuyaを迎えて奏でられた「NEO UNIVERSE」はいつにも増してまばゆく、多幸感に満ちていた。

また、ステージを行き交いながらhydeがtetsuya、kenの肩に手を回して歌ったり(「Link」ではtetsuyaも刹那、演奏の手を止め、hydeの頭に腕を回してポンポンとする一幕も)、「HONEY」では花道の先端まで躍りでたkenとステージにいるtetsuyaとが向きあって音を重ねる一方で、hydeがyukihiroの正面に立って視線を交わしながらこの曲でのみ手にしたギターを掻きむしったり。その後、tetsuyaとhydeが入れかわる形でそれぞれにken、yukihiroと向きあってプレイするなど(しかも惑星直列のごとく4人が一直線上にいるのがまたエモい)、観るものの胸を熱くさせるシーンが続々と爆誕。そして冒頭のMCへと繋がるのだが、笑顔にならずにいられるわけがないだろう。



「今日はどうなるかと思いましたけど、なんとかここまで来れました。こうやってライヴをサバイバルしていくところを観られる機会はなかなかないですから。お得ですよ、みなさん。」
アクシデントを乗りこえた安堵の表情でhydeは客席にそう語りかけた。「ここまで来られたのはみなさんのおかげです。今日を楽しみにがんばって感染対策をしてくれた人もたくさんいると思います。今でもいろいろ制限はあるけど、こうやって演奏できたり、みんなに会えるだけでも幸せだなって噛みしめています」と続け、さらに「まだまだドL'に会いに行かないといけないので、ここでくじけるわけにはいかないよね」とバンドを代表し、改めて想いを口にしたhyde。ラストは降りしきる銀吹雪に彩られ、場内には温かな一体感の余韻が残る。

「今日はごめんね。心配おかけしました。元気です! まったね?!」
最後にそうあいさつをしてステージを降りていったtetsuyaの言葉がAichi Sky Expo初日の夜を明るく締めくくった。